Lesson 01-2 高齢者の特徴 体の形

加齢による姿勢の変化

高齢者の姿勢

加齢によって体機能、筋肉が衰えていき、生活に支障が現れてくると前のページで説明させていただきました。しかしそれ以前に、筋肉が衰えたことによって今まで特に気にせず行えていた姿勢も、困難になってきます。

体を支える体幹の筋力低下骨密度の低下じん帯の石灰化など多くの要素が絡み合い、背中が丸まっていきます。この背中が丸まって腰の曲がった状態が多くの高齢者に見られる姿勢となります。

背中が丸くなることで骨盤は後ろへと傾き、その状態でバランスをとろうと膝が曲がり、頭部は体幹より前方に位置するようになります。

姿勢の変化による機能の低下

首回り

上記のように腰が曲がった状態の姿勢でいると、頭部が前方へと差し出され、前を見ようとすると顎が上がって上を向いた形になります。

このような姿勢でいると食べ物を飲み込む機能、嚥下(えんげ)機能に影響が出てくる可能性があります。

食べ物などを飲み込む際には舌の付け根にある舌骨(ぜっこつ)が前方へと引き上げられ、食道の入り口が開きます。しかし上を向いている状態では舌骨の下部にある筋肉、舌骨下筋群が常に下方へと引っぱっているため、舌骨が前上方へと引き上げられる運動を阻害してしまいます。

その結果、舌骨がうまく機能せず飲み込みが困難となってしまうのです。

また、舌骨が下方に引かれる事によって負担がかかるのは舌骨下筋群だけではありません。その逆側の筋肉、舌骨上筋群にも影響が現れます。体を動かすためには1か所の筋肉が働くわけではなく、複数の筋肉がそれぞれのはたらきを行って成立します。

上記でも説明したように、高齢者の姿勢でいると舌骨下筋群は伸びた状態になってしまう為、その動きに連動して舌骨と関わりのある舌骨上筋群にも影響が出るのです。舌骨上筋群、下筋群どちらも同じ方向へと力がかかるため、下筋群が伸びると上筋群の方も伸びるのです。

そして常時伸ばされてしまった事によって収縮しづらくなってしまい、舌骨上筋群の本来の役割である下顎骨(かがくこつ)を上下に運動すること、つまり咀嚼(そしゃく)がうまくできなくなってしまうのです。

これにより咬合(こうごう)不良咀嚼困難へと繋がるだけでなく、口がうまく動かせなくなることから会話が難しくなってしまう恐れもあります。

姿勢の違いからこれほどまでの影響が体中に現れてしまう為、常日頃から体幹を鍛えて老化に備えておく必要があります。とはいえ、わざわざトレーニングを組み込まなくても、背筋を伸ばした生活をおくったり、生活の隙間時間にバランス感覚を養うだけでも変わってきます。