五感には味を確認する『味覚』、物を認識する『視覚』、音を確認する『聴覚』、匂いを認識する『嗅覚』、物に触れて感じる『触覚』の5つがあります。そして加齢が進むことでこれらにも様々な影響が現れて来ます。
食と五感の関係
食欲を湧きたたせる食べ物を見た時や酸っぱい物を食べた時、硬い物をよく噛んで食べた時、美味しい匂いを嗅いだ時などに唾液が出て来ます。
唾液には食べ物の分子を溶かす働きがあり、胃に流れて本格的に消化する前に食べ物を溶かしやすい状態にします。唾液が出てくるのは食事をするうえで当たり前の出来事ですが、これには五感がそれぞれ働いて唾液を出しやすくしているのです。
『味覚』によって味を確かめ、『視覚』によって食べ物を認識し、『嗅覚』で美味しい匂いを味わい、『聴覚』は調理過程のジュージューと焼く音やトントンという包丁で切る音などで料理を想像し、『触覚』は皮膚だけでなく舌触りも含まれるため食感を楽しむことができます。
これら五感が正常に働くことで唾液が分泌され、食べ物を順調に栄養素へと変換させてくれます。さらに食べ物を美味しく感じることでより効果的に唾液を分泌することができます。そのため出来るだけ好き嫌いなく、どの食べ物もおいしくいただけるとより良い栄養補給が望めます。
加齢による五感の変化
加齢によって衰えていく五感は下記の通りになります。
- 触覚:口の中の感覚が鈍くなるため、口に食べ物がある事に気付かず溜め込むことがあります。
- 視覚:視力低下によって食べ物を認識しづらくなりますが、食欲減退に直接関与しません。
- 聴覚:視覚と同様、認識力は低下しますが食欲減退には繋がりません。
- 嗅覚:食べ物への感受性が低下するため、食欲低下につながる事があります。
- 味覚:味を感じるためには、唾液などの水分によって溶けた食べ物の成分から味覚を刺激することで確認することができます。しかし高齢者は唾液の分泌が少なくなるため、味を感じにくくなって食欲減退につながります。
特に味覚の減退に特徴的なのは『塩味を感じにくくなる』という点です。そのため味付けがしょっぱくなってしまい、血圧に影響を及ぼしかねません。
口内の変化
五感と同じように、口内にも様々な変化が現れます。
- 歯:虫歯や歯槽膿漏などによる自歯の減少、入れ歯による補助が必要となってきます。
- 噛む力:筋肉と同様、噛む力も衰えて来ます。
- 唾液:唾液の分泌量が減り、口腔乾燥が増えて来ます。
- 舌:味を感じるための味蕾(みらい)が減少します。
- 飲み込む力:飲み込む筋力も低下します。
これらの変化が現れることによって固い物、たくさん噛まなければならない物を食べる気力が減ってしまい、柔らかい物、飲み込みやすい物へと偏ってしまいがちです。
まだ食べる気力があれば良いのですが、食欲が低下していき食事量も減っていくと低栄養となって体の機能が十分に働かなくなってしまいます。
栄養の摂取量が少ないとそれだけ体機能の衰えも加速していくので、栄養のバランスや調理法などを工夫してたくさんの栄養を得られるようにしましょう。
