『健康』を維持する為のはたらき
『食べる』ことはとても一般的な行動ですが、その普通なはたらきを行う事で高齢者は心身共に健康な生活を送ることができる大切な行為です。
ですが老化によって体が衰え、食事をするのにも苦労が増えてくるとサプリメントなどの栄養補助食品を多用するようになったり、点滴によって食事をとらなくても栄養を補給することができます。たしかにこれらの方法を用いて生命を維持していくことは可能ですが、心の潤いを満たすことは出来ません。
たとえ食事をとるのに体力をそがれるにしても、介助する人から食べさせてもらうにしても、『自ら意識して口から食べる』ことが重要なのです。
食べることへの欲求、つまり食欲は人間が基本的に持ち合わせている欲求です。
美味しく楽しく食べることが、栄養や水分の補給のみならず「生きている」「元気」「健康」という実感に繋がります。どの年代にも言えますが、高齢者には特に食べる行為が精神的に重要な意味を持っています。
介護が必要な人にとっての食事の意味
高齢者、なかでも介護が必要となって来た人にとって『食べる』ことは下記のような意味があります。
- 食事により、各種の栄養を補充することができる。それによって健康を維持することができ、疾病への予防、回復が行える。
- 食べる喜び、楽しみによって精神の潤いを感じることができ、それによって生きている実感を得ることができる。
- 食事の見た目、香り、味、硬さ、温度など、様々な要素がそれぞれ大脳に刺激を与える。さらに『噛む』という行為がはっきりとした覚醒へと繋がり、そのうえ箸やスプーンなどの道具を使用して食事を行う事で認知症の予防にもつながる。
- 食事を介して周囲の人たちと交流を行う事で孤独感が薄まり、精神活動が活発になる。
- 1日に3回の食事を行う事で、規則正しい生活リズムを作り出せる。
- 介護者にとっては、食事の際の話題などからコミュニケーションが深まり、よりお互いのことを理解することができる。
高齢者にとって、今まで何気なく行っていたいつもの生活を変わりなく行えることで、精神の安定や認知症の予防ができます。これに加えて適度な運動が入る事で体の機能も衰えにくくなり、より健康に長生きすることができます。
場合によっては栄養補助食品や点滴などを使用することも増えて来るでしょうが、可能な限り、口から食事をとる事をお勧めします。筋肉の衰えや歯の損失、認知症による認識力の低下など様々な問題があるでしょうが、1つ1つ乗り越えながら、楽しい食事を提供していきましょう。
